驟雨の後
Paris,France
今日はエイプリル・フールで、シナップスがどういった仕組みかは知らないが突然佐藤春夫の「美しい町」が頭の中に駆け巡った。
見知らぬ名前の男から手紙をもらった若い画家は「こちらに会いに来てほしい。面白い話があり、君を愉快にさせるだろう」と築地のホテルに呼び出される。呼び出しをかけた男はブレンタノ、実は画家の旧友であり現在はアメリカに暮らしている。そして莫大な遺産を手にいれたので一緒に美しい町を建設したい。ぜひとも手伝ってくれというのだ。
場所は築地の横の隅田川砂州。100戸規模も住宅群である。住民となる条件はそこには「自分達で択び合つて夫婦になつた人々」とか、「決して金銭の取引きをしない」など。
夢のある計画に夜遅くまで語り合い心を動かされていく。そうして建築技師も参加して三人はホテルの一室を事務所にして計画は進んでいく。
壮大な計画は3年の月日を持って第一段階を終了。三人はシャンパンを飲みながら祝福しあった。がここでブレンタノは「私のおやぢも山師であったが、山師の息子がまた山師なのだ」と建設資金を持っているというのは大嘘だと告白する。
若き画家と老建築技師ともに「美しい町」の構想はいつのまにか彼らの夢になっていたので、ブレンタノが去った後も夜な夜な中州へと足を運んでしまう。
怒りを通りこして夢を追い求める情熱だけが強くなっていったのだ。
「実在するものよりも幻の方が美しいとは、昨日までの、私のやうな馬鹿の言ふことである。幻は美しい、さうして実在するものはもつと美しい」
ブレンタノ・カワサキ
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